ハイネケンは140年の歴史を持ち190か国以上で販売されている、世界的なビールメーカーです。日本では、2023年4月にハイネケン社の完全子会社としてハイネケン・ジャパン株式会社が設立されました。Amazonとの直接取引を開始し『Ubun BASE(ウブンベース)(※1)』が心強いツールになっているというハイネケン・ジャパンのシニアキーアカウントマネージャーである竹内愛未氏に、その活用法を聞きました(以下敬称略)。
※1:『Ubun BASE』とは、ウブンが展開しているAmazonマーケティング支援ツール
――ハイネケン・ジャパン様が『Ubun BASE』を利用するようになったのは、どのようなきっかけで、いつごろからですか。
竹内:『Ubun BASE』の利用を開始したのは2025年の4月です。きっかけは、Amazonとの販売を直接取引開始に合わせて、自社でマーケティングから在庫管理まで一貫して管理する体制へと移行したことでした。
ハイネケン・ジャパンが独立した法人として事業展開を始めたのは2023年からですが、ECビジネスを拡大していくうえで、さらなる体制の改善が必要でした。 広告運用も外部に任せきりで、どのようなターゲットにどう届いているのか把握できないまま運用されている状況でした。
まずは直接取引が開始され、自分たちで管理できる環境を整えたタイミングで、『Ubun BASE』も直接利用するようになりました。自社で直接アクセスできるようになってから、データの可視化と運用の最適化が一気に進みました。
上司のほかはEC経験者が少ない社内で運用するなか『Ubun BASE』は最も頼りになるツールになっています。
――どのような頻度で、どの機能を使っていますか?
竹内: 頻度については、基本的に毎日見ています。売上状況や広告パフォーマンスをチェックすることが日課になっていますね。特に、視覚的に見やすいダッシュボードは、数字の変化を直感的に把握しやすいため重宝しています。
広告を打てば売上は上がりますが、広告を出していない日の売上へどう影響しているのか、本当に効率的な広告運用ができているのか、といった点もROAS(※2)の数値から読み解くことができます。
社内レポート作成やデータ蓄積の面でも、『Ubun BASE』は大変重宝しています。ローデータをCSVファイルでダウンロードできるため、弊社で作成した関数を組み込んだExcelシートに読み込ませるだけで、日別に蓄積したデータもまとめて出力でき、社内報告用のデータとしてすぐに活用できます。過去のデータと比較したり、傾向を分析したりといったことが属人的な経験や勘に頼らず、客観的に状況を把握して判断できる体制を構築できつつあると思います。
『Ubun BASE』で特に活用しているのは、スポンサー広告自動入札機能です。広告予算が限られているなかで、運用効率が大きく向上しました。以前は広告キャンペーンを一度設定したら、予算が切れないよう途中で止めるといった対応しかできていませんでしたが、自動入札機能の活用により、月間予算内での配信ペースが自動的に最適化されるようになりました。
さらに、キーワードやターゲットの自動追加機能や、ROAS(広告費用対効果)が一定の基準を超えた際に入札金額を変更するといった細かな自動設定も併用しています。これらの機能により、運用効率は格段に向上しました。
なかでも特に助かっているのが、予算配分の自動調整機能です。ビール市場は競合が多く、広告の消化スピードが非常に速いため、たびたび予算超過に陥りがちです。予算配分のペースを自動で調整してもらえることは、一人で運用を担当する身としては計り知れないほどありがたいです。
※2:ROASとは、「Return On Advertising Spend」の略語で、「広告費用対効果」を意味します。
――『Ubun BASE』に欲しい新たなサービスなどはありますか?
竹内:広告自動入札機能は確かに便利なのですが…。深夜帯は購入もないので、広告を止めたいと思うのですが、何か方法はありますか?
田中(ウブン担当):その点については私たちも検討しましたが、実際には(広告を)止める必要はないと判断しています。Amazonの広告費はクリック課金制のため、深夜のようにクリックが少ない時間帯は、そもそも費用があまり発生しません。加えて、深夜にクリックしたユーザーが後日購入するケースもあるため、必ずしも「深夜は無駄」とは言えないのです。
特殊な状況でない限り、広告効率を高めるには、CPC(クリック単価)を抑え、予算内でできるだけ多くのクリックを獲得することを優先すべきです。その方がトータルのトラフィック(訪問数)が増加し、結果的に売上向上へつながります。予算に対して(広告消化が)ハイペースな場合は『Ubun BASE』が自動でCPCを引き下げるため、そのようにしてトラフィックを最大化するほうが最適とされています。
竹内:そうなのですね、ありがとうございます。そういう情報って、みなさんはどこから仕入れて、どうやって勉強しているんでしょう?気になることがあってもなかなか調べ方が分からなくて。こういう目的の時はこういう運用の方法をするとか、そういう事例みたいなものが『Ubun BASE』で見られるといいなといつも思っています。
田中:ある種のハウツーコンテンツですね。確かに大事ですね。ぜひ取り組みたいと思います。ありがとうございます。
――情報のキャッチアップはどのようにされていますか?
竹内:Amazonのプラットフォームは常に進化し続けていますし、私が前職でAmazon販売を担当していた数年前と比べても、広告の仕組みは格段に複雑になっています。知識を持ってツールを活用しないとうまく運用できないですし、Amazon自体は新機能について積極的に情報提供してくれるわけではないので、キャッチアップしていくのも大変です。新しいサービスの存在を知るのは、主に『Ubun BASE』を開いた時に表示されるポップアップぐらいです。
田中:AMC(Amazon Marketing Cloud)(※3)機能は使われていますか?
竹内:それもいつの間にか始まっていた機能という感じです。ただ、当社は商品がビールなのでまだAMCのオーディエンス機能は使用できないみたいなのです。
田中:アルコール商品は長らく広告が制限されていましたが、現在はAmazonがASIN単位(※4)で許可を出す「ホワイトリスト方式」により、徐々に解禁されています。御社の商品もすでにご利用可能なはずです。AMCを活用すればリピート率を高めるために、自社商品を購入した顧客が再購入しそうなタイミングで集中的に広告を配信するといった、高度なターゲティングが可能になります。
※3:AMCとは、Amazonが提供するデータクリーンルームソリューション。広告主はAMCでAmazon Adsデータと自社データを安全に分析し、広告効果の最適化や顧客理解を深めることができる
※4:ASIN(Amazon Standard Identification Number)とは、Amazonのプラットフォーム上で商品を識別するために使われる10桁の英数字による固有のコードです。
――『Ubun BASE』でこれから積極的に活用したいサービスはありますか?
竹内:AIによる分析サマリーがとても便利だと感じています。広告効率を改善しようとすると、これまでは全レポートに目を通し、ASINごとに確認する必要があり、時間がかかっていました。その点、AIが要点をまとめてくれるおかげで、判断が格段に早くなりました。
例えば、終売になった商品は販売も値下げもしないため、ROASが低くても当然だと即座に割り切れます。その結果、本来対応すべき重要なポイントに集中できるのです。
さらに「除外キーワードを追加しましょう」といった具体的な提案もあり、自分では意識していなかった改善のヒントをもらえる点も重宝しています。
田中:このサービスは、直近の売上状況をはじめ、カテゴリー別・商品別のデータや注目すべきトピックを自動で抽出します。例えば「広告効果の低下」「特定商品の異常値」といった変化がピックアップされるため、状況を即座に把握可能です。
私たちは、ユーザーが日常的に着地見込み(当月の予測売上)や前年比・前月比を確認する際、ブランド別などの細かい内訳もワンタッチで確認できることを重視しています。 こうした“即時性”と“変化の察知”にフォーカスし、AIが有意な変化を自動検知するよう本サービスを設計しました。さらに、スライドレポートにもAIによるコメントを加え、データから読み取れるインサイト(示唆)をそのまま可視化しています。
現在は、データの抽出・分析・評価などを担う複数のAIが協働する「AIエージェント機能」を開発中です。これにより、ユーザーが「今月の広告のトピックスを教えて」と自然言語で質問するだけで、AIが広告データを分析して回答する仕組みの構築を進めています。
竹内:まさに当社のように人的リソースが限られている現場にはありがたいサービスですね。楽しみにしています。
――今後のテーマを教えてください。
竹内:現在の戦略は、既にハイネケンを知ってくださっている顧客を確実に取り込むことに重点を置いています。転売業者なども見られますので、そうした業者とカートの取り合いをすることもあり、Amazonや直販の公式の販売チャネルで確実に購入してもらえる環境を整えることが、今年のミッションとなっています。
来年以降は新規顧客の獲得にも力を入れていきたいですね。そのために検討しているのが、スポンサーブランド広告の活用です。競合他社は、セール時にスポンサーブランド広告を積極的に展開し、検索結果の最上部に表示され顧客を獲得している。この領域での投資を強化することで、これまで獲得できていなかった顧客層にリーチできたらと思っています。
田中:最近では、競合ASINの購入ユーザーなど特定のオーディエンスに対し、FireTV、TVer、Prime Video AdといったOTTメディア(※5)を活用してブランディングプロモーションを行う手法が増えています。
これはまさしく、オーディエンス単位でピンポイントにターゲティングし、テレビ画面へCMを配信するようなアプローチと言えます。
竹内:確かにそうですね。私たちもスポンサー広告やブランド広告までは取り組んでいますが、最近流行のOTTメディアの広告まではまだ手をつけられていなくて。そうした新しい形式も早めに取り入れていきたいと考えています。
※5:OTTとは、「オーバー・ザ・トップ(Over The Top)」の略称で、インターネット回線によってアクセスできるコンテンツ配信サービスの総称であり、テレビやラジオではなく「Netflix」や「TVer」などが代表例。
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